司法書士が分かりやすく解説!生活保護を受けている人は相続放棄できるのか?
「財産を相続したら生活保護を打ち切られてしまうと聞いたので、相続放棄をしたいのですが・・・」
このようなご相談を受けることがよくあります。一生働かないで生活できるような大金なら良いかもしれませんが、幾ばくかの金銭や不動産を相続しただけで生活保護が打ち切れてしまってはその後の生活は一体どうしたらよいのか・・・それであれば、相続放棄をして生活保護が今までどおり生活保護をもらった方が良い・・・となるわけですが、必ずしも相続放棄が認められるわけではありません。
今回は、相続放棄と生活保護について考えてみましょう。
1. 生活保護制度とは
生活保護制度とは、資産や能力等すべてを活用してとしても生活に困窮する人々に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。生活保護の相談や申請の窓口は、市区町村の福祉事務所となります。
2. 生活保護を受けるための要件
生活保護は世帯単位で行うことになっています。よって、世帯員全員が、使える資産、能力その他全てをフル活用してもなお最低限度の生活を送ることができないということが前提となっています。具体的には、下記のような要件があります。
要件① 資産の活用がなされている
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却や賃貸を行い、あらゆる資産を
生活費にする必要があります。
要件② 能力の活用がなされている
働くことができるのであれば、能力に応じて働くことが求められます。
要件③ 利用できる制度や給付が全て活用されている
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、必ずしもそれらを活用してくだしなければなりません。
要件④ 扶養義務者の扶養がなされている
親族等から援助を受けることができる場合には、必ず援助を受けなければなりません。
上記を満たしていることを前提として、世帯収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合には、生活保護がもらえるということになります。
3. 「相続」が生活保護に与える影響
たまに誤解をしている方もいますが、生活保護を受けている方でも当然相続する権利があります。よって、相続する金銭や不動産がある場合には、上記の「①資産の活用がなされている」という要件を満たすために、しっかりと原則として「相続」をしなければならないということになります。財産を相続した場合には、福祉事務所に報告しなければならないとされています。相続した財産により当面の生活が安定する場合には、一旦生活保護は「停止」となり、再度生活が困窮した段階で再開することになります。
生活保護が打ち切られては困るので、「相続放棄」を行うことは原則として認められていないのです。相続放棄を行うことにより、逆に生活保護の要件を満たさないとになってしまうリスクがあります。
しかし、維持費ばかりかかり処分がなかなかできない山林、農地、空き家などのいわゆる「負動産」を相続放棄することは可能です。また、借金などの負債を相続放棄することもできます。なぜなら、これらは生活を圧迫することになるからです。
4, まとめ
以上のように、生活保護を受けている方は、原則として相続放棄を行うことは認められておりません。生活の糧にできるものは、相続しなければならないのです。とはいえ、相続するか相続放棄をするべきか悩むケースもあると思います。その際は、相続が起きたことをしっかり報告した上、福祉事務所のケースワーカーに相談してみると良いでしょう。
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア 代表
株式会社ミラシアコンサルティング 代表取締役
生前対策実務家倶楽部ミラシア 代表
千葉商科大学 特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事
相続、遺言、後見、家族信託などが専門。終活・相続関連の相談実績は累計1,000件を超える。
豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の終活・相続対策サービスを展開している。
【保有資格】
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・AFP
【メディア実績】
フジテレビ「とくダネ!」、産経新聞、東京新聞、毎日新聞、夕刊フジ、ハルメク、週刊朝日、サンデー毎日、他多数