相続放棄の前に必ず確認!相続放棄の相談は誰にしたらいい?
亡くなった父親に多額の借金が・・・相続ではプラスの財産(お金、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金などの負債)も相続人が引き継がなければならないのが原則ですから、残された家族が返済をしていかなければならないことになります。このような負債相続から免れるために、「相続放棄」をしなければなりません。それでは、相続放棄をする場合には、まずは誰に相談したらいいのでしょうか?
1. 相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人のプラスの財産やマイナスの財産の全てを引き継がないことをいいます。相続放棄を行った場合には、負債を引き継ぐ必要がなくなるだけでなく、お金や不動産などのプラスの財産も一切相続することができなくなります。これは相続放棄を行うことにより、「初めから相続人ではなかったこと」(民法939条)になるからです。
相続放棄を行うためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申述を行わなくてはなりません。また、相続放棄には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から「3ヶ月以内」(通常は亡くなったことを知ってから3か月以内ということになります)にする必要があります。
司法統計によれば、相続放棄の件数は、年々増加傾向にあります(平成25年:17万2936件/平成26年:18万2082件/平成27年:18万9296件/平成28年:19万7656件/平成29年/20万5909件/平成30年:21万5320件)。平成30年の相続税納税者数が25万8498人ですので、それに匹敵する数字です。親の借金などの「負債相続」で困っている方がいかに多いかが分かります。今後も相続放棄はさらに増加していくと言われています。
2. 相続放棄の手続き
相続放棄の手続きは家庭裁判所に対して行う必要があります。他の相続人に放棄する旨を伝えれば良いと誤解している人や遺産分割協議の中で何も財産を相続しなければ良いと誤解している人がいますが、あくまで相続放棄は「裁判所」で行う手続きということはしっかり理解しておきましょう。
相続放棄を行うには、相続開始から3ヶ月以内に下記の書類を家庭裁判所に提出し申述する必要があります。
①相続放棄の申述書
②戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本など
【共通】
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
【申述人が,被相続人の配偶者の場合】
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
③収入印紙800円分(申述人1人につき)
④連絡用の郵便切手
3. 相続放棄の専門家は弁護士と司法書士のみ
相続放棄の手続きはもちろん自分で行うことも可能です。しかし、万が一手続に不備があり相続放棄ができなかったリスクや手続きの煩雑を考えると、専門家に依頼したいと考える方も多いでしょう。
相続放棄の相談ができるのは、法律上は弁護士と司法書士だけとなります。他の相続の手続きと異なり、行政書士や税理士には依頼することができないという点には注意が必要です。
4. 弁護士と司法書士の主な違い
相続放棄の相談や依頼は、弁護士と司法書士に対してのみできます。それでは、両者の違いはどこにあるのでしょうか。主な違いは下記のとおりです。
①費用
一般的に、弁護士と司法書士の報酬を比べると、弁護士の報酬の方が高くなるケースが多いと言えるでしょう。これは、司法書士よりも弁護士の方が扱える法律事務の範囲が広く、高難度の案件に対応できることが理由といえます。通常の相続放棄であれば、どちらに依頼しても結果が大きく異なることはほとんどないでしょう。
②対応できる範囲
弁護士に依頼した場合、全ての手続き・対応を弁護士が「全て」代理することができます。これに対して、司法書士に依頼した場合、一部の対応を自分で行う必要がでてくる可能性があります。
③紛争案件の対応ができるか
司法書士は、紛争性がある案件の相談を受けることはできません。紛争化している案件(またはしつつある案件)の対応は、法律上弁護士にのみ認められています。
5. まとめ
ほとんどの方にとって「相続放棄」ははじめての経験となると思います。
自分で相続放棄を行った場合、万が一、相続放棄が認められなかった場合に受けるダメージは非常に深刻です。ご自身で対応するのに不安な方は、まずは専門家(弁護士・司法書士)に相談してみることをオススメします。
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア 代表
株式会社ミラシアコンサルティング 代表取締役
生前対策実務家倶楽部ミラシア 代表
千葉商科大学 特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事
相続、遺言、後見、家族信託などが専門。終活・相続関連の相談実績は累計1,000件を超える。
豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の終活・相続対策サービスを展開している。
【保有資格】
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・AFP
【メディア実績】
フジテレビ「とくダネ!」、産経新聞、東京新聞、毎日新聞、夕刊フジ、ハルメク、週刊朝日、サンデー毎日、他多数